送電線と碍子を固定している引き留めクランプや送電線の接続部である直線スリーブは、保守上重要なチェックポイントとなります。
老朽化による接続部分の緩みから接続部の接触抵抗が増え、異常過熱が発生し事故につながる可能性があります。10倍望遠レンズを使うと、100メートル離れた16mmのターゲットを観察することができます。こうした保守は、赤外線サーモグラフィ(赤外線カメラ)の得意とするところです。
建物外壁の仕上げモルタルやタイルが剥離すると、その裏面に空気層ができます。密閉された空気層は大きな断熱性を持っているので、仕上げ材が剥離している部分では、 外壁表面と躯体との熱伝達が小さくなります。
一般的には、日射が当たったり外気温が高くなり外壁表面温度が上昇するときには剥離部の方が健全部より高温となり、壁面に当たる日射が減少したり外気温が低くなり壁面温度が下降するときには逆に剥離部の方が健全部と比べて低温となります。この温度差を熱画像から読み取り、剥離部を抽出することができます。
のり面が昼間、太陽光の日射や気温の上昇などで熱の供給を受けるとき、のり面の背後に空洞が存在すると、その部分は健全部(地山と密着している部分)より熱容量が小さく、空洞に存在する空気層により断熱され熱伝導が悪いため、温度が早く上昇し健全部との間に温度差を生じます。また、夜間はこの逆で、日射による熱の供給がなくなり気温も降下するため、空洞部分の温度が健全部より早く低下し昼間とは温度差が逆転します。一方、湿潤部や湧水がある部分は、昼夜を問わず低温部として検出されます。このようにのり面表面の温度差を赤外線サーモグラフィ装置で計測することにより、のり面の変状を調査することができます。
コンクリート構造物のコンクリートが剥離し落下する事故が散発し、コンクリート構造物の赤外線法による保守点検の必要性が社会的にクローズアップされています。コンクリート内部に部分的な剥離(浮き)が発生すると、剥離部に存在する空気層が断熱効果を示し、太陽光や気温の上昇によって温められる過程では、剥離部のほうが密着部(健全部)より早く温度が上昇し、高温部として検出されます。一方、太陽の日射がかげり気温も低下してゆく日没から夜間にかけては、熱容量の違いにより剥離部のほうが、密着部に比較して早く温度が下がるため低温部として観測されます。この剥離部と健全部の温度差を、赤外線カメラで計測することにより、剥離部の場所を検出することができるわけです。